「今日はどうしたんだい?」
遅刻した生徒に理由を尋ねると返答は様々だ。
返答は様々だが、尋ね続けるうちに遅刻は減っていく。
このように、少しでも意識させ続けると、減っていくものだ。普通は。
ところが彼のは減らなかった。確信犯だ。
1コマ分残されるより、時間通り来る方が余程楽だろうに。
不思議だった。
遅刻はするけれども、
1コマちゃんと残ってやり残した宿題や復習をやって帰るのは、
彼の律儀さのなせる業か。
「あの子、わざと遅刻してるんですよ。」
謎は、保護者面談で解けた。
「時間通り行っても、
どうせ居残るから時間通りに行かなくても一緒だって
開き直っているんです。」
どうやら、
「時間通りに塾に行っても、宿題をやってなくてどうせ居残りになるわけだから、
どうせなら少し寛(くつろ)いでから塾に行った方がいいや」と言うことらしい。
「なるほど、なかなかやるなあ」と思わず感心してしまった。
結局、彼は面談の後きちんと来ることになったのだが、
その時に彼が心掛けたことは2つ。
1. どうせ行くなら、時間通りに行こう。
2. どうせやるなら、言われる前にやろう。
考えてみれば、彼は順番を変えただけだ。
「1時間目に遅刻して塾に行き、2時間目と3時間目に勉強していた」のを
「1時間目と2時間目に勉強して、家に帰ってから宿題と復習をする」に。
「宿題をやらずに塾に行き、注意されてから居残りで宿題をやる」のを
「宿題をやってから塾に行き、ほめられてから授業に入る」に。
兎にも角にも、彼は時間通りに来るようになった。
授業中の態度も今のところまずまずだ。
あたり前をあたり前に実行するだけで、
同じ時間勉強をするにしても、同じ時間仕事をするにしても、
成果が全く違う。
そこに彼は、なんとなく気づいてくれたようだ。
人生の奥義の一つだと思う。
遅刻を指摘し続けてよかった。(正直、地味に面倒くさい。)
子どもは、自分では、
なかなか「あたり前をあたり前に」やることの重要性に気づくことができない。
だから、周りの大人がそれを伝えていかなくてはならない。
例えば、あたり前に注意するということを、あたり前に続けて。
例えば、あたり前にやるということに関して、あたり前にお手本となり続けて。
子どもは、自分にとっての新しい食材を嫌いになることが多い。
その食材を15回程度出し続けると、
ようやくその食材に対する好き嫌いが直っていく傾向がある、という話を聞いたことがある。
子どもにあたり前が大事だということを伝えていくために
今日も、あたり前を積み重ねる指導をしていこうと思う。
パシフィック・セミナー 代表 北山義晃
0 件のコメント:
コメントを投稿